乳輪下膿瘍について
1. 乳輪下膿瘍とは
乳輪下膿瘍とは、乳頭や乳輪の下にある乳腺組織に炎症が起こり、膿(うみ)が溜まった状態を指します。
乳腺炎の一種ではありますが、特に 授乳中ではない女性にみられることが多いことが特徴です。炎症が強くなると、皮膚が赤く腫れ、熱を持ち、押すと強い痛みを感じます。時に皮膚が破れて膿が外に出てしまうこともあり、症状が長引くことや再発を繰り返すことがあります。
乳輪下膿瘍は、乳がんとは異なる病気ですが、症状だけでは乳がんとの区別が難しい場合もあるため、正確な診断が大切です。痛みや腫れがあると日常生活や仕事にも支障が出ることがあるため、我慢せず、早めに相談することが改善につながります。
2. なぜ起こるのか(原因)
乳輪下膿瘍の主な原因は、乳管の閉塞(詰まり)と細菌感染です。
乳輪の下には、母乳を乳頭へ導くための「乳管」が通っています。この乳管が炎症や乳頭周囲の皮脂成分などの影響で詰まると、乳腺に分泌物が溜まり、細菌が繁殖しやすい環境になります。
主な原因と背景
- 乳管内の分泌物の停滞
- 喫煙(特に発症リスクに強い関連が知られている)
- 乳頭の乾燥・ひび割れ
- 細菌感染(皮膚常在菌が関与することが多い)
乳輪下膿瘍は、乳房ケアの問題ではなく、「乳管という構造が持つ性質」によって起こることが多い病気です。
つまり、誰にでも起こりうる乳房のトラブル と言えます。
3. 症状
乳輪下膿瘍では、以下のような症状がみられます。
- 乳頭や乳輪周囲の赤み
- 押すと強い痛み
- 局所の腫れやしこりのような硬さ
- 皮膚が熱を持ったように感じる
- 時に膿が出る
- 発熱や体調不良を伴う場合もある
症状はゆっくり進むこともあれば、急に悪化することもあります。
痛みが強いと授乳・睡眠・仕事・育児に影響が出ることがあるため、早めの受診が負担を軽減します。
4. 診断に用いる検査
① 視触診
赤みや腫れ、痛みのある部位を丁寧に確認します。
② 乳腺エコー(超音波検査)
膿がどこに溜まっているか、炎症の範囲、しこりの有無を確認します。
治療方針を決めるうえで非常に重要な検査です。
③ 必要に応じて
- 血液検査(炎症反応の評価)
- 膿の培養検査(菌の種類の特定)
- 乳がんとの鑑別が必要な場合 → マンモグラフィー・生検などを追加
5. 乳がんとの違い
乳輪下膿瘍は炎症性の病気であり、乳がんとは発生の仕組みが異なります。
しかし、乳頭周囲のしこりや皮膚変化は乳がんでも起こることがあるため、診察と画像検査で区別することが重要です。
自己判断で「膿が出たから大丈夫」と思い込むと、治療が遅れることがあります。
6. 治療について
乳輪下膿瘍の治療は、症状の程度によって段階的に行われます。
① 初期・炎症が軽い段階
- 痛み止めの使用
- 局所を温める
- 経過観察しながら炎症コントロールを行う
② 細菌感染が疑われる場合
- 抗生剤の内服
- 必要な場合、抗菌薬を調整
③ 膿が溜まっている場合(膿瘍形成)
- エコーで位置を確認しながら排膿
注射針で膿を抜く、または小切開して排膿することがあります。
④ 再発を繰り返す場合
乳輪下膿瘍は、同じ乳管の閉塞があると再発することがあるため、必要に応じて、問題の乳管を一部切除する手術が検討される場合があります。これは、症状が長期化することを防ぐうえで有効な治療です。
7. 日常生活でのケアと注意点
乳輪下膿瘍は、生活習慣だけで完全に予防できるものではありませんが、症状の悪化を防ぐために以下が役立ちます。
- ブラジャーの締め付けを避ける
- 強く揉んだり押したりしない
- 乳頭の乾燥を防ぎ、ひび割れを予防する
- 可能な範囲でストレスを軽減する
- 禁煙(特に重要)
特に喫煙は、乳管の周囲に炎症が起こりやすい原因となることが示されています。
8. 再発について
乳輪下膿瘍は、再発しやすい病気として知られています。
再発そのものは珍しいことではありませんが、繰り返すことで痛みや精神的な負担が大きくなります。
再発には、
- 乳管の構造的な問題
- 局所の炎症が残ること
が関係しているため、必要に応じて外科的治療が検討されます。
「再発したから悪い病気になった」わけではありません。
再発時こそ、早めに相談することが大切です。
9. まとめ
乳輪下膿瘍は、乳頭・乳輪の下に炎症が起こり、膿が溜まる病気です。授乳中ではない女性にも起こり、痛みや赤み、腫れ、しこりが生じます。多くの場合、乳腺エコーで状態を確認することが治療の第一歩です。
六本松乳腺クリニックでは、
- 症状と炎症の範囲を丁寧に診察
- 必要に応じた抗生剤・排膿処置
- 再発を防ぐための乳管の評価
- 本院(及川病院)との連携による手術対応
まで、一貫してサポートしています。
つらさを我慢する必要はありません。
少しでも「変だな」「痛いな」と感じたら、どうかおひとりで悩まず、ご相談ください。