パジェット病(乳房パジェット病)について
1. パジェット病とは
パジェット病(乳房パジェット病)は、乳頭や乳輪の皮膚に現れる特殊なタイプの乳がんです。乳管の中で発生したがん細胞が、乳頭・乳輪の皮膚表面へ広がることで、皮膚症状として現れます。
そのため、乳がんと聞いたときに多くの方が思い浮かべる「乳房のしこり」がない場合でも、乳頭の湿疹やただれから始まることがあるのが特徴です。乳房の皮膚に起こるトラブルは、湿疹やかぶれとして見過ごされてしまうこともあります。
しかし、適切な検査と診断によって早期に発見することができれば、治療方法の選択肢は広がり、良好な予後につながることがあります。「皮膚に現れるタイプの乳がん」と理解していただくとイメージしやすいでしょう。
2. 症状の特徴
パジェット病は、初期の段階では皮膚の変化として現れます。以下のような症状が代表的です。
- 乳頭・乳輪の皮膚が赤くなる(発赤)
- 湿疹のようにかゆみがある
- 皮膚がはがれたり、ただれを伴う
- かさかさしたり、じゅくじゅくする
- 分泌物(透明~黄色、血性の場合もあり)がみられる
- 皮膚が厚くなったり、色が変わる
これらは、湿疹(乳頭湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎など)とよく似ています。そのため、皮膚科を受診し、塗り薬で様子を見てしまうことも少なくありません。
しかし、数週間~数ヶ月経っても改善しない場合は、乳腺外来での確認が必要です。
3. なぜ気づかれにくいのか
パジェット病が見過ごされやすい理由は以下のとおりです。
理由
皮膚症状から始まるため→「皮膚の病気」と思われやすい
痛みが少ないことが多い→受診するきっかけを失いやすい
しこりがない場合がある→乳がんと結びつけにくい
湿疹の治療薬で症状が一時的に軽減する→「治った」と思い受診が遅れることがある
「湿疹が続く」=必ず乳がんではありません。
しかし、湿疹のように見えてもパジェット病であることがあるため、乳腺専門の判断が重要です。
4. 原因と発生のしくみ
パジェット病は、乳管内に発生したがん細胞が、乳頭表面へ広がってくると考えられています。
そのため、パジェット病の患者さんの多くは、同じ乳房内に乳管がん(乳管内進展を含む)を合併していることがあります。
乳頭表面に見える症状は「結果」であり、進行の評価には、乳房の内部までしっかりと検査する必要があります。
5. 診断のための検査
パジェット病の診断は、皮膚の症状だけで判断することはできません。
以下の検査を組み合わせて行います。
皮膚生検(乳頭の一部の組織を採取)
これが診断に最も重要です。
マンモグラフィー
微細な石灰化やしこりの有無を調べます。
乳腺エコー
しこり・乳腺の内部構造を確認します。
MRI(必要に応じて)
乳管に沿ったがんの広がりを確認するのに役立ちます。
6. 治療について
パジェット病の治療は、乳房内にがんがどの程度広がっているかによって決まります。
手術
- 乳房温存手術:病変が限局している場合に選択されます。
- 乳房切除術:がんの広がりが大きい場合に選択されます。
乳頭・乳輪の切除が必要となることが多い点が、一般的な乳がん手術との違いです。
放射線治療
温存手術を行った場合に併用されることがあります。
薬物療法
がんの性質(ホルモン受容体、HER2など)に応じて、以下を組み合わせます。
- ホルモン療法
- 抗HER2療法
- 化学療法(抗がん剤)
7. 治療後のフォローと生活
パジェット病は、手術後も定期的なフォローアップが必要です。
術後の経過だけでなく、皮膚・乳房の見た目の変化に対するケアや、心身のサポートも大切になります。
- 定期的な画像検査
- 再発の確認
- 乳房の形についての相談
- 日常生活・仕事の調整の相談
乳がんは身体だけではなく「心」や「生活」と深く結びついています。
不安を抱え込まず、気になることはいつでも相談してください。
8. 乳頭・乳輪に症状がある方へ
湿疹が長く続くときは、皮膚だけの問題ではない可能性があります。
次のような場合は、乳腺外来での確認をおすすめします。
- 2週間以上続く乳頭・乳輪の湿疹
- 塗り薬をやめると再発する症状
- 片側だけに症状がある
- 分泌物や出血を伴う
「念のため確認する」ことは、安心につながります。
9. まとめ
パジェット病は、見た目が「湿疹」と似ているため気づかれにくい乳がんです。
しかし、早期に発見し、適切に治療することで、良好な経過を得られる可能性があります。
不安を感じたときは、「様子をみる」ではなく、「一度相談する」。
それが、あなたの身体と未来を守る大切な一歩です。
六本松乳腺クリニックでは、症状の確認から検査、治療方針の説明、本院への連携まで一貫してサポートしています。